2016年06月07日

抒情的間奏曲

抒情的間奏曲
Intermezzo Lirico (1924)
サルヴァトーレ ファルボ ジャングレコ
Salvatore Falbo Giangreco (1872. 5. 28 Avola ~ 1927. 4. 8 Avola)

 作者はシチリア島のアヴォラに生まれ、同地に没したイタリアの作曲家。Falboが姓であり、Giangrecoは母方の姓を名乗ったものである。パレルモのコンセルヴァトーリオにおいてCasi とStronconeにピアノを、Favaraに対位法とフーガを、Zuelliに作曲法を学んだ。1896年にピアノと作曲法のディプロマを得て、シチリア島のニコーズィアの吹奏楽団の指揮者となり、その後アヴォラの吹奏楽団に指揮者として迎えられた。マンドリン合奏のためには、1910年のIl Plettroの第3回のコンコルソで金牌を受賞したSuite Campestre(田園組曲)、1911年のIl Plettroの第4回コンコルソで第1位を受賞したOuverture in Re minore(序曲ニ短調)、1921年の第5回コンコルソで第1位を受賞したSpagna “Suite”(「組曲」スペイン)、同じく第1位を受賞したQuartetto a Plettro(プレクトラム四重奏曲)などがある。作品数は多くないが、いずれもマンドリンのための重要なレパートリーとして受け入れられている。
 本曲は1924年にIl Plettroの作曲コンコルソで銀牌を受賞し、同年出版された。現編成はマンドリン二部、マンドラ、ギターの四部合奏であるが、本日は低音部の補筆を行って演奏する。
 本曲は2つの主題による二部形式である。ファルボの楽式について考えるときに、ソナタ形式の適用の観点から考察することは興味深い。

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 これらの作品を俯瞰すると、ファルボのソナタ形式の捉え方とその変遷が見て取れる。ソナタ形式は一般に、2つの主題の調性対立とその緩和を軸にした楽式であると定義づけられる。この観点で見た場合、展開部があって再現において両主題が主調に回帰する田園組曲第1楽章は最もソナタ形式らしく、展開部がなく提示と再現の調がほぼ同一であって調性対立に変化がない抒情的間奏曲は最もソナタ形式らしくない。その他の作品はそれらの間にグラデーションのように存在している。上記の表は作品を年代順に並べたものであるが、ソナタ形式の濃淡はほぼその順に沿って移り変わっている様子が見られる。その他の特徴として、主題内部で明確に複数の調を示して、それを調性対立の変容の要素に用いている点が挙げられる。組曲スペイン第1楽章はその代表的なものであるが、それと同様の扱いを抒情的間奏曲にも見ることができる。
 本曲は前述のように2つの主題からなる。第1主題はマンドラによって提示される近代的な響きをもつものである。他方第2主題はマンドリンによって提示され、バロック舞曲であるサラバンドのリズムを用いた古風な印象の主題である。サラバンドのリズムは第1主題の一部分にも用いられ、両主題をつなぐチャネルとなっている。


参考文献:
同志社大学マンドリンクラブ第132回定期演奏会パンフレット付録資料「アレッサンドロ・ヴィッツアーリとイル・プレットロ誌の作曲コンクールについて」
岡村光玉氏によるサルヴァトーレ ファルボとマンドリン音楽(中原誠 発行) http://www.ne.jp/asahi/mandolin/falbo/
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序曲「祖国への愛」

序曲「祖国への愛」
Amor Patrio, ouverture (1913)
フランチェスコ・アモローソ
Francesco Amoroso (1877 Salerno 〜 1916 Napoli)

 作者はイタリアの作曲家、吹奏楽指揮者。13歳でトロンボーン奏者としてナポリの音楽院に入学し、ピアノや作曲も学んだ。卒業後軍楽隊に配属され、駐屯地のボローニャの音楽院で作曲を学んだ。1903年に軍楽長に選出され、各地で指揮者として活躍した。作曲家としては歌劇、管弦楽曲、吹奏楽曲、ピアノ曲、歌曲など多くの分野で作品を残している。マンドリンのためにもピアノまたはギター伴奏のマンドリン独奏曲を中心として作品があり、中でも演奏会用ポロネーズは名作として著名である。
 本曲は石村隆行氏がイタリア留学前に中野二郎氏から「なんとか探し出してほしい」と依頼され、現地で発見した作品である。1913年にジェノヴァのEditoria Musicale Genovese主催の第2回国際作曲コンクールに入賞し、同年Arte Mandolinistica誌から出版された。Arte Mandolinistica主幹のAngelo Cigliaに献呈されている。 
本曲は、外形上は序曲らしい序奏付きの展開部の無いソナタ形式による。しかしながら、序奏と主部の主題の関連性、主題間の動機の共有、形式上の順序と調性設定などから、外形上の形式に反して多義的で重層的な構成を有している。荘厳な序奏、軽快な第1主題、メロディックな第2主題と、器楽合奏曲の魅力をコンパクトな序曲に詰め込んだ名作と言えよう。
 曲はMaestosoの序奏から始まる。序奏は2つの要素からなり、1つ目は3度上-4度上-2度下の音型とリズムを特徴とするもの(以降Aと呼ぶ)、2つ目は2度上-2度下の音型を特徴とするもの(以降B)であって、A-B-A-Bの順に奏される。主部の第1主題はAllegro giustoで、ホ短調で提示される。第1主題前半は序奏のBの要素(伴奏のリズムのみAの要素)、後半は序奏のAの要素を用いている。第2主題はト長調で提示される。前半はModeratoで新たな要素により、後半はPiù mossoで序奏のAの要素を用いている。序奏の一部を再現した後、主題の再現が行われる。第1主題の再現はイ短調で、主調と異なる調での再現であることが特徴である。一方、第2主題の再現はホ長調で、型通り同主調である。第2主題後半が再現される前に第2展開部的な部分があるが、ここでは第1主題の要素たるAとBが同主調であるホ長調で奏され、ソナタ形式の調性上の再現を補強している。第2主題後半の再現の後、要素BとAを用いた結尾句で締めくくられる。


参考文献:
アルバム フィロドリーノ2 (石村隆行)
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2015年06月20日

第43回定期演奏会

マンドリンオーケストラコンコルディア第43回定期演奏会
日 時 2015年6月27日(土) 開場:16:30、開演:17:00
場 所 かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
(京成本線「青砥駅」徒歩7分)
入場料 無料(チケットなしでもご入場いただけます)

第1部
組曲第1番 Konrad Wölki
アーベントムジーク Kurt Schwaen
群炎II 熊谷賢一

第2部
初夏のうた 歸山榮治
シンフォニエッタ第3番「ゴルゴラの丘」 大栗裕

第3部
凱旋行進曲 Giuseppe Manente / 石村隆行 編曲
組曲「田園にて」 Giulio De Micheli / 石村隆行 編曲

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2015年06月19日

組曲「田園にて」

組曲「田園にて」
In Campagna, Suite in quattro tempi,Op.56(1928)
ジュリオ・デ=ミケーリ 作曲 石村 隆行 編曲
Giulio De Micheli (1889.9.26 La Spezia〜1940.9.30 Covo) / Rid. Takayuki Ishimura

I. Alba estiva(夏の夜明け)
II. Il torrente(急流)
III. Sotto i castagni(栗の木の下で)
IV. La Sagra(祭)

 作者はイタリア北部のリグリア州ラ・スペツィア生まれの作曲家でヴァイオリニスト。5歳の頃からヴァイオリンを学び、15歳で学位を取得した後、パルマのボイト音学院に移りロメオ・フランツォーニ氏に師事した。5年後には最高の成績で教授の資格をとったが、そのまま音学院に残り、イターロ・アッツォーニ氏(第二小組曲献呈)に師事して対位法を学んだ。26歳の時にブリュッセルのトムソ音楽学校に入学し、ヴァイオリンのヴィルトゥオーソとして大賞を得たのに続き、チューリヒ音学院校長のアンドレア・フォルクマー氏(第三小組曲献呈)に師事し作曲を学び、同地の管弦楽団の指揮者となった。しかし1927年には彼の宿病となった狭心症を発症。友人の出版社社長カルロ・ベルトラモの勧めでイタリアに帰国し、演奏活動をやめ、生地に定住して作曲活動に後半生を捧げた。晩年はベルガモ近郊のコヴォに移り住み、持病の発作で没した。コヴォの街では彼を追悼して、街の通りに彼の名を冠して偲び、彼の墓地には『いつも枯れる事のない美しい調べの創造者、マエストロ・ジュリオ・デ=ミケーリ、この家に眠る。生誕地ラ・スペツィアの誇り、彼が眠るコヴォの誇り。』と碑文が刻まれている。
 作品の数は約160曲を数え、その多くが管弦楽の為の作品で、当時彼の作品をレパートリに入れないオーケストラは無い程だったといわれている。その作品の全貌は作者の遺族から石村氏に送られた資料で明らかになりつつあるが、代表作には「舞踏組曲」、「アルカディア組曲」、「エジプトの幻影」等、15の小組曲や、2つの交響的前奏曲、8曲のオペレッタ等がある。
 彼の音楽の根幹をなす特徴は『詩的な音楽』であり、夢幻的な和声や半音階的な手法と叙情性の絶妙のバランスは特筆に値するものである。景色、詩、太陽の光、鐘の音、絵画など全てが彼の着想の為に存在し、彼は常に思いついた楽句を身近な(紙巻き煙草の包みにまで)紙に書き付け、インスピレーションを膨らませたという。また後年にはその音楽芸術は教会音楽の方面でも発揮され、4曲のミサ、宗教的詩曲、レクイエム、などが発表されている。
 本曲は1928年にイタリアはサン・レモの出版社ベルトラモより出版された作品で、彼のイタリア帰国後間もない頃のもの。一連の小組曲の直後の作品番号でもあり、彼の前半期の作品の総決算とも言える大作である。4つの楽章はそれぞれソナタ形式、展開部のないソナタ形式、三部形式、ソナタ形式であって全体としてソナタ構造(管弦楽によるソナタ)をなしており、この作者の作品としては形式美を重視した構成であると言える。
 第1楽章は3/4、変ト長調である。第1の主題はハ長調をベースにしたややあいまいな調性で提示され、第2の主題は嬰へ短調で提示される。主に第1の主題からなる展開部を挟んで、再現部では第2の主題が変ト長調で再現された後、第1の主題が変ト長調で再現される。主調で提示されて主調で再現されるという意味では第2の主題が形式上の主要主題であるが、同主調(しかも異名同音)への移調によって微妙なニュアンスが生まれている。第2楽章は6/8(一部9/8)ホ短調で、快速なスケルツォ風の楽章。細かい動きの第1主題は主調のホ長調で、のびやかな第2主題は属調のロ長調で提示され、再現はどちらも主調で行われる古典的な形式である。第3楽章は4/4変イ長調の主題と3/4ホ長調の中間部からなる穏やかな緩徐楽章である。第4楽章は4/4の第1主題と6/8(2/4)の第2主題からなる自由なソナタ形式ととらえることができる。冒頭の第1主題はハ長調で提示され、その一部は拍子を変えてからヘ長調の副主題となる。その後嬰ヘ長調-ニ長調の第2主題提示、ヘ長調の副主題再現、主調のハ長調における第2主題の再現および第1主題の再現が行われる。
田園地帯の夜明けから、木々のざわめき、小鳥のさえずりが聞こえはじめ、小川のせせらぎは軽妙に笑い声をたてる。居眠りをしている栗の木の下ではときおり、その実が落ちて転がる。そして収穫の時期を迎えた村には賑やかな祭りの鐘が鳴り響く。曲の冒頭から眼前に広がる田園地帯の風景はそこが演奏会の場で或ることさえ忘れさせてくれるものであろう。

参考文献:アルバムフィロドリーノ3 (石村隆行)
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凱旋行進曲

凱旋行進曲
Marcia Trionfale (1898)
ジュセッペ・マネンテ 作曲 石村 隆行 編曲
Giuseppe Manente (1867.2.2 Sannio〜1941.5.17 Roma) / Trans. Takayuki Ishimura

 作者は斯界では知らぬ者はいないイタリアの作曲家。王立陸軍学校付属の軍楽学校にて音楽教育を受けた後、軍楽隊長を歴任した。この経歴から、作品は主に吹奏楽のために書かれている。マンドリン合奏のためにも多くの作品を残しており、その中には1906年のIl Plettro誌の第1回作曲コンクールで銅杯を受賞した幻想曲「秋の夕暮れ」や1908年の第2回作曲コンクールで上位佳作を受賞した序曲「メリアの平原にて」、1906年のシヴォリ音楽院の作曲コンクールで第2位を受賞した4楽章の交響曲「マンドリン芸術」などの重要な作品が含まれる。マネンテの作曲において演奏媒体は二義的なものであったようで、最初に吹奏楽で作曲され後にマンドリン合奏に編曲された序曲「小英雄」(Il Plettroの第4回作曲コンクールで第2位を受賞している)や、その反対にマンドリン合奏のために作曲されて吹奏楽に編曲された序曲「メリアの平原にて」が存在するなど、作曲者自身による作品の編曲が多く存在する。戦後、故中野二郎氏らによって多くの作品が吹奏楽からマンドリン合奏へ編曲されている。
 行進曲はマネンテが得意としたジャンルで、多くの作品が残っている。凱旋行進曲と銘打たれた曲は本曲の他に後年作曲された「恵まれた結婚」がある。本曲はマネンテの作品の中でも最初期に属するものであるが、長3度の転調を3回繰り返して元の調に戻る循環的転調、主調提示の主題を主調以外の主題よりも後に提示する独自のソナタ形式、2つの主題を対位法的に融合させる手法など、作者の代表的な作曲技法をつぎ込んだ意欲的な作品である。
 本曲の主調はニ長調である(原曲は変ホ長調)。主題は4つあって、循環的転調による主題A、順次下降を軸とする主題B(後年の「恵まれた結婚」の主要動機と関連性を感じることもできる)、雄大な主題C(第1主題に相当)、穏やかな主題Dからなる。提示はA(ヘ長調-イ長調-変ニ長調)、B(変ニ長調)、C(ニ長調)、D(変ロ長調)の順番に行われる。その後、やや展開されたA(変ロ長調-ニ長調-嬰ヘ長調)が挟まれた後に、提示と同形のB(変ニ長調)が奏される。その後Dがイ長調で奏されるが、ここで対旋律としてAが現れる。この対旋律のA(イ長調)は、そのまま循環的転調(イ長調-変ニ長調-ヘ長調)の一部となる(ここでDはAと融合するためか、主調での再現は行われない)。そしてC(ニ長調)がSostenutoで再現される。その後は拍子を4/4から2/2に変えて、A(ニ長調-ヘ長調)、B(ニ長調)が簡略的ではあるが主調で再現される。

参考文献:中野二郎著「いる・ぷれっとろ」http://homepage1.nifty.com/yasu-ishida/
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