2019年07月10日

交響曲「マンドリン芸術」

交響曲「マンドリン芸術」
Arte Mandolinistica, Sinfonia in 4 tempi(1905)
ジュセッペ・マネンテ 作曲
Giuseppe Manente(1867.2.2 Morcone〜1941.5.17 Roma)

 作者はイタリアの作曲家、指揮者。ナポリのサン・ピエトロ・ア・マイエッラ音楽院、マドリード音楽院、サンタ・チェチーリア国立アカデミアで音楽教育を受けた後、軍楽隊長を歴任した。この経歴から、作品は主に吹奏楽のために書かれている。マンドリン合奏のためにも多くの作品を残しており、その中には本曲の他、1906年のIl Plettro誌の第1回作曲コンクールで銅牌を受賞した幻想曲「秋の夕暮れ」、1908年の第2回作曲コンクールで上位佳作を受賞した序曲「メリアの平原にて」などの重要な作品が含まれる。マネンテの作曲において演奏媒体は二義的なものであったようで、最初に吹奏楽で作曲され後にマンドリン合奏に編曲された序曲「小英雄」(Il Plettroの第4回作曲コンクールで第2位を受賞している)や、その反対にマンドリン合奏のために作曲されて吹奏楽に編曲された序曲「メリアの平原にて」が存在するなど、作曲者自身による作品の編曲が多く存在する。戦後、故中野二郎氏らによって多くの作品が吹奏楽からマンドリン合奏へ編曲されている。
 4楽章の交響曲「マンドリン芸術」は1905年告示のU.M.L.の作曲コンクールのA部門(マンドリン四重奏のための交響曲)で第2位を受賞した。このコンクールは1905年9月が締め切りで、その他の部門として三重奏や二重奏の曲のものもあった。本曲の題名はコンクールに関わったマンドリン専門誌Arte Mandolinisticaから取ったものと考えられる。本曲の楽譜はArte Mandolinistica誌から1906年に出版され、後にフランスのL’Estudiantina誌で再版された。本日用いる楽譜は、低音部を中野二郎氏が補筆した楽譜である。
 楽曲は下記の4つの楽章からなる。
I. Allegro deciso, ハ長調, 2/4
 自由なソナタ形式による。前半を第1主題の要素、後半を第2主題の要素とした序奏に始まる。この序奏は主調のハ長調で始まるがすぐに転調し、イ長調の第2主題が(第1主題よりも先に)提示される。その後、第1主題がハ長調で提示される。展開部と再現部を有することはソナタ形式の通りではあるが、展開部においては主題が原型を保って異なる調で現れるのに対し、むしろ再現部で主題が変形されて現れる。第1主題が有するソプラノの上昇順次進行が曲全体の主題となっている。
II. Adagio Cantabile, ト長調, 3/4
 自由な複合三部形式による緩徐楽章である。主題は第1楽章の第1主題と同じソプラノの上昇進行を特徴的に有している。主題が頻繁な転調を含む展開要素が多いものであるのに対して、中間部はト長調の部分が多く調的な主題と中間部の対比は小さい。
III. Tempo di Minuetto, ニ長調, 3/4
 ダ・カーポによる厳格な複合三部形式によるメヌエットであり、非常に古典的な書法で書かれている。中間部は下属調のト長調による。全曲を通じた主題が出てこないかわりに、第2楽章との関連がもたされている。
IV. Allegretto vivacissimo, ト長調, 3/8
 フーガと自由なソナタ形式の二重形式である。フーガは元来対位法を用いた楽曲の様式であるが、楽式としてはリトルネロ形式(主題がエピソードを挟んで繰り返され、主題の再現時の調が移り変わる楽式)による。このリトルネロのエピソードを第2主題とすることでソナタ形式とのダブルミーニングの楽式としている。テンポの上で中間部となるAndantinoを有するが、これも第2主題の展開の一部である。
 本曲は交響曲らしく、ソナタ形式、緩徐楽章、メヌエット、フーガに相当する4つの楽章でソナタ構造を形成している。開始楽章と終楽章の調が異なることは(同時代のマンドリン曲にはよく見られる)特徴的な点である。第3楽章を除く全ての楽章にソプラノの上昇進行が共通テーマとして現れ、全体を統一している。このような楽章間の強い関連性は同時代のマンドリン曲の中ではむしろ特異的なことで、マネンテの動機展開の巧みさとあいまって本曲の価値を高めている。
 第1楽章においては第1主題と第2主題の順序が交換されている。マネンテは本曲の作曲直前の作品として、独創的序曲「国境なし」を書いているが、そこでも同様に第2主題が先に提示される構成を用いていた。本曲ではこの楽式が発展されている。「国境なし」では単純に第2主題が先に提示されるために曲の開始が主調ではなかったが、本曲の第1楽章では第2主題の提示の前に主調で始まる序奏が設けられていることによって楽章の最初を主調にしている。このように2つの主題を入れ替えることに加えて、展開部と再現部の機能を一部入れ替える(提示部では主題の原型を保ち再現部に展開要素を含ませる)ことで、ソナタ形式であることを包みくらますような楽式にしている。同じ工夫は第4楽章にも共通して用いられている。ソナタ形式の楽式を隠して堅苦しさを無くす書法は、本作よりも以前のH. Lavitranoの小序曲「ローラ」などにも類例を見ることができる。

解説:清田和明
参考文献:
中野二郎著「いる・ぷれっとろ」http://vinaccia.jp/nj-collect/
posted by コンコルディア at 12:37| Comment(0) | 47th定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント