2018年07月08日

歌劇「ウラガーノ」より第三幕への前奏曲

歌劇「ウラガーノ」より第三幕への前奏曲
L’Uragano, Preludio Atto III (1936)
ウーゴ・ボッタキアリ 作曲 石村隆行 編曲
Ugo Bottacchiari / Rid. Takayuki Ishimura(1879.3.1Castelraimondo〜1944.3.17 Como)

 作曲者はマチェラータのカステルライモンドに生まれ、同地の工業高校で数学と測地法を学んだが馴染まず、幼少より好んでいた音楽に傾倒していった。そしてピエトロ・マスカーニ(歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」で著名)の指導下にあるペザロのロッシーニ音学院に入学し、厳格な教育を受けた。師マスカーニからは直々に和声とフーガを学んだという。1899年にはまだ学生であったが、歌劇「影」を作曲し、マチェラータのラウロ・ロッシ劇場で上演、成功を収めオペラ作曲家としてのスタートを切った。卒業後はルッカの吹奏楽団の指揮者や、バチーニ音学院で教鞭をとるなどしつつ、管弦楽曲、歌劇、室内楽曲、声楽曲、マンドリン合奏曲など数多くの傑作を表し、諸所の作曲コンコルソで入賞した。
 マンドリン合奏のための作品としては、1906年のシヴォリ音楽院の作曲コンクールで第1位を受賞した4楽章の交響曲「ジェノヴァへ捧ぐ」、1910年のIl Plettroの第3回作曲コンクールで第1位を受賞したロマン的幻想曲「誓い」や「交響的前奏曲」などを残し、いずれも斯界の至宝的存在となっている。ボロニアで発行されていたマンドリン誌「Il Concerto」の主宰者になり、1925年にはA. Capellettiのあとを継いで、コモのチルコロ・マンドリニスティカ・フローラの指揮者に就任するなど、作曲以外の面でのマンドリン音楽への貢献も大きいものがある。
 歌劇「ウラガーノ」はVittorio Locchiが著した台本に基づき作曲された。1936年にC.O.L.から出版されたもので、イタリア王立アカデミーから賞を授けられている。ウラガーノとは、あらゆる者を破壊しつくす大暴風という意味である。本曲は第三幕の前に設けられた前奏曲で、63小節という短い曲でありながら、作者の晩年の円熟した作曲技法が惜しみなく用いられた密度の高い曲である。
 曲はソナタ形式による。2つの主題は前奏曲独自のものであるが、展開部の中間には歌劇の第三幕の主題と、第一幕の主題(単に旋律というよりは狂言回し的に伴奏に何度も現れる主題)がエピソードとして挟まれている。第1主題は作者のマンドリン合奏の名曲「交響的前奏曲」と同じ動機でできており、マンドリン音楽に親しんでいる者にもなじみやすい。
 第2主題は提示嬰ハ長調(変ニ長調)、再現変ホ長調で調性感があって、変ホ長調を主調に再現するように書かれている。一方、第1主題は主要な部分は全音音階で調性感が無いが、結尾に調性感が出るようになっている。提示と再現では全音音階部分は違いが無く、調性感が出る部分だけを書き換えて帰属する調が変わるようにし、提示ハ長調、再現変ホ長調として変ホ長調を主調に再現するように書かれている。このトリックによって、第1主題は提示と再現で同じ形であるというソナタ形式の形態を保ちつつ、第1主題と第2主題がいずれも移調されて主調に調和するという2つの主題の対等性を確保している。このような近代的な楽想と高度な楽式の調和はさらに後年の「夢の魅惑」にもつながるものであり、作者の音楽的思想の一端を見せるものである。

参考文献: オザキ企画「Ugo Bottacchiari集(1)」松本譲 編
アルバムフィロドリーノ第8巻 石村隆行 編
posted by コンコルディア at 20:36| Comment(0) | 46th定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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