2017年06月06日

少年の詩

(1989/2015)
水野真人
Masato Mizuno (1959 Nagoya ~ )

I. Allegro
II. Andante tranquillo
III. Allegro assai

 作者は名古屋の作曲家で、マンドリンのためには1980年代半ばから1990年代頭にかけて十数曲の曲を作曲している。少年の詩はそのうち作曲者の地元で初演された(これまでのところ)唯一の作品で、名古屋市立大学ギターマンドリンクラブの委嘱で1989年に作曲され、第24回東海学生マンドリン連盟合同演奏会の愛知教育大学ブロックで初演された。同年に初演された作者のマンドリン作品はセレナード第4番「3つのメルヘン」とディヴェルティメント第2番「おとぎの国の少年」で、本曲はそれらの曲と内容上の関連が持たされている。本曲は2015年に若干の改訂を加えて、フォレストヒルより楽譜が出版されている。本日はその改訂版の楽譜を用いて演奏する。
 全体は急-緩-急の3楽章からなるソナタ構造を有している。第1楽章はソナタ形式に依り、短い序奏の後にイ短調の第1主題、ハ長調の第2主題A、ニ長調の第2主題Bが提示される。第1主題と第2主題Bは動機を共有している。展開部の後、再現部ではいずれの主題も主調(または同主調)で再現される。第2楽章は三部形式による間奏曲である。主題が最初にニ長調・6/8で緩やかに提示された後、イ長調・2/2に転じて少し動きをもって演奏される。中間部は第1楽章の断片によるAllegroと無調で書かれたAdagiettoからなる。再現部では、冒頭と同じ拍子とオーケストレーションで、主題が今度はイ長調で奏される。第3楽章はソナタ形式に依り、イ短調の第1主題、ハ長調の第2主題A、ホ長調の第2主題Bを有する。第1主題は第1楽章の序奏と共通の上昇音型を持ち、第2主題AとBは第1楽章の第2主題Aと共通の動機を持つなど、第1楽章からの関連性が強く表れている。展開部を挟んで再現部では全ての主題が主調(または同主調)で再現されるが、第2主題Aの再現では楽想に変化が見られる。最後は第1楽章の序奏の動機が現れてコーダとなって終わる。
 少年は未完成であるがゆえに成長を繰り返すものである。本曲では、前向きな楽想の中に成長への希望が強く感じられる。第1楽章では第1主題と第2主題Bに共通の動機を用いているために第2主題Bでは第1主題からの発展が感じられるし、第3楽章での第2主題Aの再現においても提示からの変容が感じられる。第2楽章の再現の調を敢えて冒頭の調と異なるものとする(提示における2つの形を併せ持つ再現とする)のにも、そのような変化を感じられる。昨日まで子供だった者が少し目を離した間に大きく成長し、未来を創り出していく。そのような希望を感じてお聴きいただきたい。

参考文献:第24回東海学生マンドリン連盟合同演奏会パンフレット
posted by コンコルディア at 19:57| Comment(0) | 45th定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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