2016年06月14日

ソロヴァイオリンとマンドリンオーケストラの為の「協奏詩曲」(2005)

ソロヴァイオリンとマンドリンオーケストラの為の「協奏詩曲」 (2005)
歸山 榮治 作曲
Eiji Kaeriyama (1943.5.25 Ono〜)

 作者は1943年福井県大野市に生まれ、62年名古屋大学文学部入部と同時にギターマンドリンクラブに入部、一年後指揮者となった。
その後中田直宏氏に作曲を学び、クラブ内外で編曲を含め多くの作品を発表してきた。
 またチルコロ・マンドリニスティコ・ナゴヤをはじめとして、大学・社会人のマンドリン団体を数多く指導しており、 現在日本マンドリン連盟中部支部理事、東海音楽舞踊会議運営委員長をつとめる。 作品は多岐に渡り、マンドリン合奏曲以外にも吹奏楽曲、邦楽曲、合唱曲、劇音楽、舞踊音楽など多くの作曲、編曲活動に携わっている。1981年名古屋市芸術奨励賞授賞。マンドリン合奏以外ではギター合奏に継続的な作品が書き下ろされており、現在10数曲を数えている。
 1983年に作曲された、ソロマンドリンとマンドリンオーケストラの為の「協奏詩曲」はその初演ソロ奏者である榊原喜三氏がイタリアオリジナル作品を愛好することから多分にサービス精神を持って作曲されたという逸話を持つ作品。その後本作は87年にアンサンブル・フィル・ムジカの為にギター抜きの改作版、91年には再びギターを加えた再改訂版が作られ、それを基にこのヴァイオリン版が作曲されている。上記のような変遷の中で、初演版と比較すると和声構築がより現代的かつ明晰になり、比較的近作に近いものになってきている事は注目すべき点と言えよう。
 本作で描かれているのは「愛」の旋律と言われているが、陰影を帯びたメランコリックな旋律といびつな形のドラマティックなリズムが交互に出てくるところはただのラブソングで終わらない氏の面目躍如と言えようか。孤独なオトコの背中で語る「愛」の形は、いつの時代にもいる、不器用な形でしかキモチを表現できないオトコたちに慰めを与えるものと言える。旋律を奏でる楽器がマンドリンからヴァイオリンに替わっただけでこれ程にも印象が異なるものとなる事は初演時には想像もつかなかった事であろうが、また必然でもあったと確信出来る。透明にピンと張りつめた空気の中たゆとうように現れるヴァイオリンのフラジオレットは筆舌に尽くしがたい美しさである。「悲恋」と言えば美しいがその実、心の中のどろどろした部分はヴァイオリンでこそ表現されつくしたと言っても過言ではないだろう。帰山作品にしばしば現れるアンビバレントな感情の起伏は本作に置いては特に情感豊かに、そして改作を重ねた本版において、よりその相克する心の葛藤はよりリアルに描きだされたと確信する次第である。

参考文献:帰山栄治普及振興協会編「帰山栄治作品解説集」
http://www.bass-world.net/cgi-bin/kaeriyama_works/wiki.cgi
posted by コンコルディア at 19:08| Comment(0) | 過去の定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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