2015年06月18日

初夏のうた

初夏のうた (1974)
歸山 榮治 作曲
Eiji Kaeriyama (1943.5.25 Ono〜)

 作者は1943年福井県大野市に生まれ、62年名古屋大学文学部入部と同時にギターマンドリンクラブに入部、一年後指揮者となった。
その後中田直宏氏に作曲を学び、クラブ内外で編曲を含め多くの作品を発表してきた。
 またチルコロ・マンドリニスティコ・ナゴヤをはじめとして、大学・社会人のマンドリン団体を数多く指導しており、 現在日本マンドリン連盟中部支部理事、東海音楽舞踊会議運営委員長をつとめる。 作品は多岐に渡り、マンドリン合奏曲以外にも吹奏楽曲、邦楽曲、合唱曲、劇音楽、舞踊音楽など多くの作曲、編曲活動に携わっている。1981年名古屋市芸術奨励賞授賞。マンドリン合奏以外ではギター合奏に継続的な作品が書き下ろされており、現在10数曲を数えている。
 本作は作者が学生時代から書き進めて来た「マンドリン合奏の為の三楽章」や一連の序曲が一段落した1974年に作曲されている事や、本拠とする名古屋大学ではなく岐阜大学からの委嘱である事などから、それまでの力の入った大作指向から、少し趣の違った作品となっている。
そもそも「初夏」とはいつの事を指すのであろうか。旧暦で「初夏」は4月の事であるから、現在では5月から6月の頃を指すものと思われるが、立夏から始まり芒種までを言うという説も見受けられる。いずれも二つの季節の端境という事と思われるが、それが作品を象徴するBbとCをはじめとする二度の和音を意図的に重ねて積み上げていく和声構造から感じ取る事が出来る。
 作品はフルート、クラリネットを含み、これら管楽器が音楽に彩りを与えており、更に唯一用いられる打楽器であるトライアングルが非常に効果的で、この2つの響きがあたかも水墨画をカラリゼーションしたかのような効果を生んでいる。初夏の「萌え出る緑」「小鳥のさえずり」「小川のせせらぎ」といった風景を眼前に彷彿とさせる魅惑的な旋律美に溢れている一方、一転して後半には縦に揃った強烈なリズムから疾走感のあるAllegroとなっており、大自然の峻厳な姿も感じとる事が出来る。美しい旋律と複雑な和声やリズムの組み合わせの妙は、この時期の帰山氏ならではのもので、二つの季節だけでなく、異なるリズムの共存、同じ旋律を異なる拍節で表現するなど、1990年に近く、氏が「三楽章第4番」で描いたアンビバレンツを先取りしたものというとらえ方も出来るのではないだろうか。
 なお、本作には同時に作曲された「初秋のうた」という双子の作品があるが、本作とは対照的に調弦から音楽が始まるなど、斯界においては特殊とも言える記譜によるチャンスオペレーションの要素を含んだ作品であり、祭り囃子の狂乱も聴かれるが、非常に難解を究め、同年の東マン、全マンでの演奏以降演奏機会を得ていない作品である。
参考文献:帰山栄治普及振興協会編「帰山栄治作品解説集」http://www.bass-world.net/cgi-bin/kaeriyama_works/wiki.cgi
posted by コンコルディア at 05:11| Comment(0) | 過去の定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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