2011年06月21日

三楽章第4番

マンドリン合奏の為の三楽章第4番 (1987)
歸山 榮治 作曲
Eiji Kaeriyama (1943.5.25 Ono〜)

 作者は1943年福井県大野市に生まれ、62年名古屋大学文学部入部と同時にギターマンドリンクラブに入部、一年後指揮者となった。
その後中田直宏氏に作曲を学び、クラブ内外で編曲を含め多くの作品を発表してきた。
 またチルコロ・マンドリニスティコ・ナゴヤをはじめとして、大学・社会人のマンドリン団体を数多く指導しており、 現在日本マンドリン連盟中部支部理事、東海音楽舞踊会議運営委員長をつとめる。 作品は多岐に渡り、マンドリン合奏曲以外にも吹奏楽曲、邦楽曲、合唱曲、劇音楽、舞踊音楽など多くの作曲、編曲活動に携わっている。 近年では中国民族音楽やアボリジニに伝承される音楽などにも造詣を深めており、海外でもその作品は紹介されている。1981年名古屋市芸術奨励賞授賞。マンドリン合奏以外ではギター合奏に継続的な作品が書き下ろされており、現在10数曲を数えている。
 作者の「マンドリン合奏の為の三楽章」はその名の通り3つの楽章からなる作品であり、これまでに5曲が作曲されている。第1番から第3番までが1969年から1973年の作曲初期に集中して書かれた後、本作は作曲中期の1987年に書かれている。第3番までが急-緩-急の枠組みで作られていたのに対し、本作第4番は各楽章がより自由に構成されている。また第3番以降では擦弦楽器や管楽器を編成に加えて音色と表現の拡充がされているが、本作でも独奏ヴァイオリンが特徴的に用いられている他、シンセサイザーと打楽器が響きを添えている。なお、「三楽章」の最近作は2004年に作曲された第5番である。
 1980年代の作品としては1982年に「Ouverture Historique No.4」、1983年に「協奏詩曲」、1984年に「まわき」、1985年に「ちまた」と円熟味を得た作者の代表作が並び、本曲はそれら中期の作品群の集大成と見ることもできる。本曲は死生観を表現した曲とも言われ、特に第3楽章は作者曰く「死にきれないレクイエム」とのことである。生と死、聖と俗というアンビバレンツの生む葛藤が全曲を通じて感じられる。
I. 大きく緩-(緩-急)-緩からなる三部形式で構成される。冒頭は短調と長調の間を浮遊するような旋律に始まり、続く第1マンドリン・ヴァイオリンの旋律も半音階的に揺れる旋律線をもって、この両者を行き来する混沌感の強い音楽である。ギターがリズムを刻み始める中間部の前半からは調性も明瞭になり、輪郭のはっきりした音楽となる。Allegro moderato –Allegroの中間部後半ではさらに2度上昇-5度上昇の明確な主題が現れ、次第に活力と生命への希求を得ていく。しかし頂点に達した後は力を失い、最初の混沌の再現に戻っていく。
II. 三部形式に依る諧謔的な楽章。主部では、4拍子の機械的な打拍の上に2つの主題が順に演奏される。中間部Vivoは木魚のリズムに乗って快速に疾走する。再現部では2つの主題が同時に重ねて演奏される。
III. 独奏楽器群で提示された主題による前半と、静寂な後半の2つの部分からなる。ギターによって提示される下降の順次進行と刺繍音が前半の中心となる主題であり、マンドローネの経過句を挟んでマンドロンチェロで奏される動機も重要なものである。高まりと鎮静を繰り返す音楽は、やがて静寂な和声が支配する後半に達する。動きを取り戻そうとするも長続きせず、最後は下降順次進行の断片と溶け合うようにヴァイオリンの天に上るような旋律が幕を引く。

参考文献:帰山栄治普及振興協会編「帰山栄治作品解説集」http://www.bass-world.net/cgi-bin/kaeriyama_works/wiki.cgi
posted by コンコルディア at 20:19| Comment(0) | 過去の定演曲目解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする