2011年06月24日

第39回定期演奏会によせて

本年の演奏会は図らずも特別な意味を持つ演奏会となりました。
震災後10日ほど経った頃のニュースの中に、今必要なものとして、沢山のものが並べられた中に、静かな時間、生の音楽、というものが取り上げられていたのを見ました。
 音楽が持つ力とはどんなものなのでしょうか?

 明るい雰囲気を醸しだす音楽、勇壮に士気を鼓舞する音楽、優しく慰める音楽、賑やかに場を盛り上げる音楽、愛する人を想い奏でる音楽、哀しい気持ちを分け合う音楽。様々な場面で、音楽は人の感情に訴える音の波動であり、波動が共鳴して感情を揺さぶるものであります。しかし、こういう未曾有の事態の中で過ごす毎日は、なかなかそうした波動をひとつにして、人の心に響かせる事の難しさを知らしめると共に、音楽を志す私たちに一体何が出来るだろうかと問い続ける日々でした。
 欧米ではウィーンでもベルリンでもドレスデンでも、亡くなられた方への為の追悼演奏会や、被災者の皆さんに対する義援演奏会などが行われてきました。キリスト教社会にあってはこうした亡くなった方々を皆で追悼するという事が、古来音楽と共に自然な感情として行われる事を、改めて感じましたが、日本人にとってはこうした感情は、共感は出来てもなかなか自分の事としては思い描けないものではないかとも感じたりしました。

 そして再開した練習で、いつも何気なく会って笑っている仲間に再開出来た事が、どれほど幸せな事なのかと大変感激をいたしました。よく言われるように、「当たり前でいる事の幸せ」がここにもあったんだとしみじみ感じ、その仲間たちが一層いとおしく感じました。
こうした中で行われる本年の演奏会では、冒頭に著名な指揮者であり、作曲家でもある曽我大介先生が、この度の震災で亡くなられた方々を追悼して書き下ろした「"Kibou" requiem for victims of earthquake in Japan」を演奏いたします。岩手の南部牛追唄に始まり、天変地異を経験した人々が災厄から再び立ち上がろうとする姿を経て、再び南部牛追唄が鐘の音とともに奏され愛する大地で心ならずも眠りについた同胞の魂の救済を呼びかけるという作品です。
 作者の曽我大介先生は、この曲について「震災から1週間ほど経った頃、日本で数々のコンサートが、会場の損傷や節電による中止または自粛になり、このような未曾有の災害を前に音楽家としてどのような事ができるのか、考えました。そこで、世界中に住む音楽家の友人たちに手伝ってもらい、震災支援キャンペーンの軸となる音楽を作ろうと思いたったのです。2日半で作曲して、ネットで呼びかけを始めました。この"Kibou"は、2管編成のオーケストラで演奏される5分程度の短い曲です。楽譜はサイトからダウンロードできるようにしました。フルスコア(総譜)から各楽器のパート譜まで、すべてです。印刷も簡単にできます。」と語っておられます。(DIGITAL DIMEのホームページより抜粋)
そしてそれに呼応するかのように、偶然にも生きる事の意味を問いかける作品が本年のオオトリを飾る事になりました。

 歸山榮治作曲「マンドリン合奏の為の三楽章第四番」。全編ソロヴァイオリンを迎えるマンドリン合奏作品では異色の編成であり、40分を超える長大な作品です。1987年に作曲されてからまだ3回しか演奏されていません。(東京では、前回私たちが演奏してから19年ぶりの演奏です)
 この作品の中には「人生」「喜怒哀楽」「死」「嘆き」「憂い」「相剋」そうしたあらゆる人間の感情が凝縮されています。
 生きている事は「生かされている事」と言われます。奇しくもこの記憶すべき年にこの大変意味の大きな作品を演奏する事になったのもひとつの巡り合わせかと思います。
 初演のメンバー曰く、「レクイエムを書こうとして書けなかった音楽」と初演時に、先生より話があったと聴きます。特に第三楽章については、「死に切れないレクイエム」とも言われています。
レクイエムは、その言葉通り死者の「安息を」願うラテン語の典礼文であり、ロマン派以前の音楽にあっては、多くの場合悲しみや嘆きの典礼文を通して、追悼する気持ちが昇華した感情の音楽です。近代においては、B.ブリテンの「戦争レクイエム」、P.ヒンデミットの「我が愛する者たちの為のレクイエム」、D.カバレフスキーの「レクイエム」のように戦死者を悼み、戦争や体制そのものを、ある詩人の言葉を借りてある時は静かに、ある時は激しく断罪するなかで没故者を深く哀悼した作品もあります。キリスト教国ではないわが国でも、三善晃の「レクイエム」では死者の肉声を、死者の群れに身を投じ、一緒になって叫び、嘆いているような作品が生まれています。
 このようにレクイエムは近年では作者の思想や人生観がそのまま音になる事がしばしばであり、帰山先生の作品においても、そこにあるのは慟哭であり、悪ふざけであり、祈りであり、切ったら血の出る音楽ですが、レクイエムになりえなかったという点で、死者の為のものではなく、生ける者の為の音楽であると解釈出来ます。死にたくても死に切れなかった、生きていかなければならない者たち、生きていく事を諦めかけてもう一度立ち上がろうとする者たちの音楽といってもいいかもしれません。ソロヴァイオリンが歌う息の長い旋律は、願いだったり、嘆きだったり、笑いだったりします。それに時に寄り添い、時に対立し、共に生きていくオーケストラ。つらくて悲しくて、いやでいやで仕方ないけど、生きていくしかない事を嘲るような諧謔的な音楽もまた、避ける事の出来ない真実として、そのままなんら飾る事なく現れます。そして人生の幕が降りようとするその時に、初めて訪れる生の肯定。これこそが、生きることの本質的な意味であり、帰山作品において問われてきた「生きることの意味」について、初めて語られたひとつの帰結なのではないかと私は考えました。
 この演奏がどんな意味をもてるのか、誰かの生きる力になろうなんていう僣越な事を言うつもりはありません。
 そこに描かれたものを、修練してきた技術を背景に、一人一人が自分のおかれた環境と、震災を目の当たりにして見つめなおした自身の生き方や感情というエッセンスをのせて奏でる事が出来た時に、この音楽はこれまでの演奏とは違う意味を持つ、生きとし生けるものの為の音楽として孤高の姿を浮かび上がらせるであろう事を確信しております。
 様々な気持ちを込めて演奏いたします。何が描けるのかはわかりません。誰かの力になれるかもわかりません。しかし、そこにある音楽をひたむきに「真実」としてお届けする事をお約束いたします。
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2011年06月22日

6月18日 今年度最後の練習報告!

今シーズンの練習も、はや今日が最後でした。
今回は、社長@セロが担当します。

今日の練習は、名古屋から雪山怪獣う〜さんとスーパーライト隊長がきてくれました。
新品のスーパーライトケースから、古く黄ばんだ横内のセロが現れるさまは、
もんしろちょうと信じていたサナギからチャドクガが羽化するような衝撃でありました。
でも内心は、スーパーライトがちょっと羨ましくもあったりもする。


毎年恒例なのだが、最後の練習は通しながらところどころおさらいといった流れでした。

●サウル
サウルの前半で弦切って張りかえても、ソロに間に合うことがわかって一安心。
それと、導入部はなかなか拍がやってこないので飛び込み注意(内輪の注意事項)

●田園
2楽章で「抱擁とくちづけ」し、3楽章で「やさしき対話」の後、
最終楽章で唐突に「踊る」あたりがなかなか感情移入できないわけですが、
昼は石神井公園あたりでボートにでも乗り、夜は中野のディスコにでも行くべ、
というノリだと思えば、まあそういうものなのかとも思う。

●群炎T
群炎は、演奏者一人ひとりが炎となって燃え上がるわけですが、
その前にマンドリンとドラの方々は、指が燃え上がってそうです。
ここにも循環冷却装置とやらが必要なのかも。

●土偶
最近耳にする団員のブルーなつぶやき。
腰が痛い、肩が上がらない、咳が止まらない、美容院でゲロ吐きそうになった・・・
ユーたち、土偶で言えばきっとまだ1楽章の破壊ステージ。
2楽章でお祈りして、3楽章の再生ステージをクリアすれば、
肩なんて2πラジアンくるくるっすよ。

●3の4
バイオリンがめっちゃ素晴らしいということは、今回の演奏会の自慢のタネでもあるが、
1年間練習してきたわれわれマンドリンオーケストラだって負けてないと思う。
今年最後の曲、みんながんばろう。
この曲は、ピックの割れるようなフォルテッシモ、右手が痙攣するようなピアニッシモ、
いろいろな要素が凝縮されてて「40分間世界一周」っていう気になれる。
しかしまあ、この曲をもう1回弾く日が訪れるとはね・・・。

●Dear Concordia
結局、最初は誰が・・・?


6月25日、かつしかシンフォーニーヒルズで
皆様のお越しをお待ちしております。
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2011年06月21日

三楽章第4番

マンドリン合奏の為の三楽章第4番 (1987)
歸山 榮治 作曲
Eiji Kaeriyama (1943.5.25 Ono〜)

 作者は1943年福井県大野市に生まれ、62年名古屋大学文学部入部と同時にギターマンドリンクラブに入部、一年後指揮者となった。
その後中田直宏氏に作曲を学び、クラブ内外で編曲を含め多くの作品を発表してきた。
 またチルコロ・マンドリニスティコ・ナゴヤをはじめとして、大学・社会人のマンドリン団体を数多く指導しており、 現在日本マンドリン連盟中部支部理事、東海音楽舞踊会議運営委員長をつとめる。 作品は多岐に渡り、マンドリン合奏曲以外にも吹奏楽曲、邦楽曲、合唱曲、劇音楽、舞踊音楽など多くの作曲、編曲活動に携わっている。 近年では中国民族音楽やアボリジニに伝承される音楽などにも造詣を深めており、海外でもその作品は紹介されている。1981年名古屋市芸術奨励賞授賞。マンドリン合奏以外ではギター合奏に継続的な作品が書き下ろされており、現在10数曲を数えている。
 作者の「マンドリン合奏の為の三楽章」はその名の通り3つの楽章からなる作品であり、これまでに5曲が作曲されている。第1番から第3番までが1969年から1973年の作曲初期に集中して書かれた後、本作は作曲中期の1987年に書かれている。第3番までが急-緩-急の枠組みで作られていたのに対し、本作第4番は各楽章がより自由に構成されている。また第3番以降では擦弦楽器や管楽器を編成に加えて音色と表現の拡充がされているが、本作でも独奏ヴァイオリンが特徴的に用いられている他、シンセサイザーと打楽器が響きを添えている。なお、「三楽章」の最近作は2004年に作曲された第5番である。
 1980年代の作品としては1982年に「Ouverture Historique No.4」、1983年に「協奏詩曲」、1984年に「まわき」、1985年に「ちまた」と円熟味を得た作者の代表作が並び、本曲はそれら中期の作品群の集大成と見ることもできる。本曲は死生観を表現した曲とも言われ、特に第3楽章は作者曰く「死にきれないレクイエム」とのことである。生と死、聖と俗というアンビバレンツの生む葛藤が全曲を通じて感じられる。
I. 大きく緩-(緩-急)-緩からなる三部形式で構成される。冒頭は短調と長調の間を浮遊するような旋律に始まり、続く第1マンドリン・ヴァイオリンの旋律も半音階的に揺れる旋律線をもって、この両者を行き来する混沌感の強い音楽である。ギターがリズムを刻み始める中間部の前半からは調性も明瞭になり、輪郭のはっきりした音楽となる。Allegro moderato –Allegroの中間部後半ではさらに2度上昇-5度上昇の明確な主題が現れ、次第に活力と生命への希求を得ていく。しかし頂点に達した後は力を失い、最初の混沌の再現に戻っていく。
II. 三部形式に依る諧謔的な楽章。主部では、4拍子の機械的な打拍の上に2つの主題が順に演奏される。中間部Vivoは木魚のリズムに乗って快速に疾走する。再現部では2つの主題が同時に重ねて演奏される。
III. 独奏楽器群で提示された主題による前半と、静寂な後半の2つの部分からなる。ギターによって提示される下降の順次進行と刺繍音が前半の中心となる主題であり、マンドローネの経過句を挟んでマンドロンチェロで奏される動機も重要なものである。高まりと鎮静を繰り返す音楽は、やがて静寂な和声が支配する後半に達する。動きを取り戻そうとするも長続きせず、最後は下降順次進行の断片と溶け合うようにヴァイオリンの天に上るような旋律が幕を引く。

参考文献:帰山栄治普及振興協会編「帰山栄治作品解説集」http://www.bass-world.net/cgi-bin/kaeriyama_works/wiki.cgi
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2011年06月20日

第39回定期演奏会のご案内 2011/6/25 17時開演

以下の通り、第39回定期演奏会を開催いたします。
みなさまのご来場をお待ちしております。

マンドリンオーケストラコンコルディア第39回定期演奏会

日 時 2011年6月25日(土) 開場:16:30、開演:17:00(予定)
場 所 かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
(京成本線「青砥駅」徒歩7分)
入場料 無料(チケットなしでもご入場いただけます)

※プログラムに先立ちまして、東日本大震災で亡くなられた方々を追悼して下記楽曲を演奏いたします。
本演奏は曽我大介氏の提唱するkibou 音楽プロジェクトに賛同し、演奏を行うものです。

前奏

KIBOU〜Requiem for victims of the earthquake on 11 March 2011 曽我大介/M.O Concordia 編曲

第1部
序曲「サウル王の悲劇」 Giovanni Bolzoni/石村隆行編曲
牧歌的組曲「田園への旅」 Giovanni Bolzoni/石村隆行編曲

第2部
マンドリンオーケストラの為の群炎I (2000年改訂版) 熊谷賢一
マンドリンオーケストラの為のシンフォニエッタ第6番「土偶」 大栗裕

第3部
マンドリンオーケストラの為の三楽章第4番 歸山榮治
(ヴァイオリン独奏:中島麻)

※未就学のお子様のご入場は出来ませんのでご了承ねがいます。

Image0001.JPG

※曽我大介作曲 kibou については以下をご参照ください。
http://www.soga.jp/ID/
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2011年06月19日

シンフォニエッタ第6番「土偶」

マンドリンオーケストラの為のシンフォニエッタ第6番「土偶」
Sinfonietta Nr.6 “Dogû” (1978)
大栗 裕
Hiroshi Ohguri (1918.7.9 Osaka〜1982.4.18 Osaka)

 作者は生涯を関西を中心とした日本音楽界の為に捧げた日本のクラシック音楽史上の大功労者。朝比奈隆に師事し、1941年旧東京交響楽団にホルン奏者として入団したのを皮切りに、多くの楽団に在籍、大阪音大講師に就任した。作品には関西歌劇団により初演された「赤い陣羽織」、朝比奈・ベルリンフィルにより初演された「大阪俗謡による幻想曲」等の管弦楽曲、「神話」などの吹奏楽曲等多方面に作品を残した。「浪速のバルトーク」の異名を誇り、日本人の土俗的かつ原始的な感情に根ざした作品を残した。1958年に大阪府芸術賞、1991年に日本吹奏楽アカデミー賞を受賞。大阪市音楽団(吹奏楽作品)や大阪フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽作品、Naxos日本作曲家選輯の3枚目として)による作品集のCDがリリースされている。
 マンドリンオーケストラのためにはシンフォニエッタを始めとした純器楽のほか音楽物語、ミュージカルファンタジー等を多数残しており、その総数は約40曲にも及んで作者の作品の中でも多くの割合を占める。
 コンコルディアでは第38回定期演奏会より1回に1曲ずつ大栗のマンドリンオーケストラのためのシンフォニエッタをとりあげることとしており、今回はその2回目に当たる。大栗のシンフォニエッタは7曲(及び編成違いのサブナンバー1曲)が作曲されており、ソナタ形式等を用いた3楽章の形式を雛形としながら作曲者の音楽性が表現されている。
 今回取り上げるシンフォニエッタ第6番「土偶」は、1978年に関西学院大学マンドリンクラブ第53回定期演奏会にて初演された。大栗の作品で日本的な題材を用いたものとしては、「大阪俗謡による幻想曲」のように民謡などの音楽要素を直接的に用いたものと、「神話」など歴史的な素材を標題としたものがあるが、本曲は後者にあたる。土偶については改めて説明するまでもないかもしれないが、人間を模して造られた土製品で、縄文時代に製作されたものをそう呼んでいる。現在出土する土偶はなんらかの形で破損しているものが多く、祭祀の際に意図的に破壊することで再生を願うことを目的に作られたという説もある。そのような標題から、本曲に古代人の生活、古代人の自然への畏怖、シャーマニズム的な儀式を感じることもできるだろう。
 本曲は3つの楽章からなり、急-緩-急の構成を取る。第1楽章Allegroはソナタ形式に類似した形式であり、2つの主題と展開部、リピートによる主題の忠実な再現、第2展開部からなる。主題は日本的な5音音階の陽音階をベースに様々に変形させることで形作られており、現代的な中に日本風を感じさせる。第2楽章Andante-Adagio-poco piú mosso(Andante)はABCBAの鏡像的な三部形式。第3楽章Finale, Allegro moltoは変拍子とバスの保続音が特徴的なロンド形式である。第1エピソードは第1楽章の第1主題と同一の動機でできており、全曲の統一性を高めている。
 最初に提示された主題動機が最終楽章で形を変えて力強く再現されることは、土偶の呪術的な側面である「再生」を表したものと見ることができる。すなわち本曲にあるのは、再生への願い、意志、そして力である。それは3000年以上前の太古からこの島国に住む人々が行ってきたことであり、今我々が行おうとしていることでもある。現代人である我々には、土偶を破壊することによって何かを再生することはできない。しかしそうであるからこそ、本曲を“音楽による呪術”として演奏することで、皆様と共に一つの願いを形にしたい。

参考文献:日本の作曲家―近現代音楽人名事典(日外アソシエーツ, 2008)、マンドリンオーケストラコンコルディア第26回定期演奏会パンフレット
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2011年06月17日

群炎I

マンドリンオーケストラの為の群炎I
(1971、改訂2000)
熊谷 賢一
Kenichi Kumagai(1934.2.16 Yokohama〜)

 作者は1934年に横浜に生まれ、愛知学芸大学卒業後、間宮芳生、助川敏弥の両氏に師事、NHKの委嘱による作曲、指揮活動を開始した。その後、川島博、中川弘一郎の両氏と「三音会」を結成し、各種音楽団体の委嘱による作曲活動をはじめとしてドラマ、映画、舞踊、室内楽、合唱、と幅広い活躍を続けてきた。合唱曲の分野では特に多くの作品があり、雑誌「教育音楽」において73年より継続して小中高生の為の合唱曲を多数発表した。特に日本作曲家協議会主催の演奏会では「地球の夜明け」「風花」「2つの春の歌」などが初演されている。他にも90年には朝日新聞社・日本合唱連盟主催による第一回朝日作曲賞で「イタリアの女が教えてくれたこと」が第一位を受賞している。その他「やがて雨のあがる朝に向かって」「夜明けに寄せる3つの歌」、歌曲集「北の雪降る街から12ヶ月の歌」、創作オペラ「ゆきおんな」、管弦楽と鳴り物の為の「群炎」、など多くの作品が全国で演奏されている。 
 マンドリン合奏には実験的な音楽から平易なアンサンブル用の作品まで多くの作品を残しており、ボカリーズI〜X、群炎I〜VI、ラプソディーI〜VI、バラードI〜VI、プレリュードI、等がある。作者のマンドリン合奏のための作品は、学生団体の不作法や著作権処理の不備などを理由に1996年から2000年の間演奏凍結がなされていたが、氏の作品を初演するなど縁の深いプロムジカマンドリンアンサンブル(広島)の創立者であった高島信人氏の働きかけや斯界からの熱心な要望もあり、現在では作者との適切な手続きを踏まえて演奏が可能となっている。
 本曲は作曲者にとって最初のマンドリン合奏のための作品で、1971年に東海学生マンドリン連盟演奏会(名古屋学院大学ブロック)において初演された。その後数回の改訂がされている(ギターパートの大幅な改訂は1980年代前半には既に行われていたらしい)が、今回のプログラムでは2000年のプロムジカマンドリンアンサンブルの第21回定期演奏会「熊谷賢一の世界(1)」における演奏凍結解除の際に再改訂された版を用いる。
 本日の演奏を聴いて、40年前にマンドリン合奏のためにこのような曲が作曲されていたことに改めて驚きを感じる方もいるのではないだろうか。同年の東海学生マンドリン連盟演奏会では川島博の最初のマンドリン合奏曲である北設楽民謡「せしょ」も初演されている。大栗裕のシンフォニエッタ第1番の作曲が1967年、その後継続的に器楽曲を作曲するのが1972年からであることと併せて考えると、同時期には日本的な音素材を現代的な扱いで導入した作品がマンドリン音楽において受容され始めたと見ることもできる。
 作者のマンドリン合奏曲は、特に後期の作品においては自作の合唱曲を接続曲風に編曲するなどして、歌謡性が重視されているものが多い。初期の本作においては、緊張感のある不協和音や激しいアーティキュレーションにより、タイトルからも想像されるような力強さ、荒々しさが音響に表れている。しかしながら、その根幹をなすのはやはりうたごころである。ひとつの旋律を何度も繰り返しながら、アーティキュレーション、ハーモニゼーション、オーケストレーションが様々に変容する。その中心にあるのはまさに歌を歌うこころである。
 それがマンドリンオーケストラ以外ではなしえない音響とともにひとつの世界として結実している様は、マンドリン音楽にとっての稀有なひとつの宝玉である。このような曲がそれまでマンドリン合奏のための曲を作曲しなかった作者によって書かれたということは、マンドリン合奏を熟知しない者によってマンドリン音楽の全く新しい世界を切り開くことができるという意味において、この音楽に携わる者にとっての大きい希望である。作曲40周年という節目の年にこの音楽に触れられる喜びを、聴衆の皆様と共有したい。
 曲は大きくは三部形式による。前打音を伴う撥弦音に始まった音楽は、ギターの分散音型に導かれるようにして主題を提示する。主題の旋律は日本の5音音階である陽音階を(厳格ではなく)用いたもので、楽節の最初と最後の動機を共有する2つの形(順にAとBと呼ぶ)を有する。提示部では特にBの主題が多様に歌われる。中間部はテンポを落とした静謐な音楽で、別の5音音階である律旋法の旋律と5度および4度の堆積を中心とした和声でできており、雅楽のような音響を作り出している。再現部では主題が中間部の4度5度和声を伴って再現される。最後にはAの主題と同時に中間部の旋律が再現され、曲が閉じられる。
 
参考文献:音楽家人名事典 新訂第3版 (日外アソシエーツ, 2001)、マンドリンオーケストラコンコルディア第32回定期演奏会パンフレット、邦人作曲家・マンドリンオーケストラ作品リスト
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2011年06月15日

序曲「サウル王の悲劇」、牧歌的組曲「田園への旅」

序曲「サウル王の悲劇」
“Saul” Ouverture d’introduzione alla Tragedia Saul, op. 30 (1874)
牧歌的組曲「田園への旅」
Gita Campestre, Suite Idilliaca
ジョヴァンニ ボルツォーニ 作曲 石村隆行 編曲
Giovanni Bolzoni (1841.5.15 Parma 〜1919.2.21 Turin) / Rid. Takayuki Ishimura 

 作曲者はイタリアの指揮者、教師、作曲家。パルマの音楽学校にてG. del Mainoにヴァイオリンを、Griffiniに声楽を、G. Rossiに作曲を学んだ。1859年に卒業した後は各地の劇場指揮者、音楽学校の校長などを歴任した。トリノの音楽高等学校では校長および作曲科の教授を務め、器楽科の設置などを行って厳格なオペラ重視の伝統の見直しを行った。作曲家としては数曲のオペラも残しているものの、主要作品は室内楽曲と管弦楽曲であり、オペラ優勢の時代にあって一線を画している。特性的な小品や叙事的な序曲などを好んで作曲し、本日演奏する「サウル」を含む5つの序曲や弦楽四重奏のためのromanza senza paroleなどが代表作である。
 本日演奏する2曲はいずれも京都在住のマンドリニスト・音楽研究家の石村隆行氏による編曲である。主宰・指揮者を務めるESTUDIANTINA PHILODOLINO di KYOTOおよび技術顧問を務める同志社大学マンドリンクラブなどでイタリアロマン派の音楽を中心とした作品を多数編曲して発表しており、その中には本日演奏する他にもボルツォーニの作品が複数含まれる。

 序曲「サウル王の悲劇」はボルツォーニがF. Morlacchi劇場の指揮者をしていたころに作曲した管弦楽のための序曲である。
 サウルとは旧約聖書のサムエル記に登場するイスラエル最初の王である。サウルは神に選ばれて王となるが、アマレク人との戦いにおいて「アマレク人とその属するものを一切滅ぼせ」という神の意志に従わなかったために神から見放されてしまう。サウルに替わって神の加護を受けたのは竪琴の名手であるダビデであった。サウルは初めダビデの竪琴によって癒されるが、ダビデが戦闘で成果を挙げるにつれ妬みを抱くようになり、何度もダビデを殺そうとする。そしてサウルは神の導きを得ることなく戦いのうちに死を迎え、その後を継いでダビデがイスラエルの王となる。
 曲は下降解決の倚音を特徴とする緩徐な序奏に始まる。この倚音はAllegro agitatoの激しい第1の主題に引き継がれるが、この主題は現れるたびに形を変える。一方やや穏やかな第2の主題は変化が少なく、常に同じ調で現れる。カデンツァを挟んだ緩徐な中間部では竪琴の音楽が強調されるが、ここでも第2の主題が優勢である。中間部が終わって、序奏の旋律は再現されるものの、第1の主題は明確に原型で再現されることが無いまま曲が閉じられる。
 複数の主題を有するものの、楽式はソナタ形式には依らず、主題間の対比に焦点のあるつくりとなっている。竪琴と関連付けられた第2の主題がダビデを表すとすると、泰然としたダビデに対して現れるたびに形を変える第1の主題は運命に翻弄されて迷走するサウルのように見える。

 牧歌的組曲「田園への旅」は次の4楽章からなる組曲である。
I. 行進 In marcia, Tempo di marcia, moderato 2/4, ヘ長調
II. 抱擁とくちづけ Carezze e baci, Andantino elegante 3/4, 変ロ長調
III. やさしき対話 Gentile colloquio (Duettino), Adagio 3/4, ハ長調
IV. 幻想的な踊り Danza fantasiosa, Allegro vivace 3/4, ト短調-変ロ長調
 いずれも三部形式に依る。第1楽章は導入部的な役割の軽さのある行進曲風の音楽である。第2、第3楽章はいずれも緩徐楽章であるが、特に第3楽章ではバスの保続音上に歌われるマンドリンとリュートモデルノ(5コース弦のマンドロンチェロ)独奏の2重奏が美しい。第4楽章は情熱的な舞曲で、中間部では第2楽章の旋律が回想されるとともに第3楽章の主題が対位法的に演奏される。

参考文献:The New Grove Dictionary of Music and Musicians, Second Edition, (Grove, 2001)
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2011年06月14日

6月12日練習報告

本番まで今回を含めて練習はあと2回。
本日のブログ担当はこばちぃ@チェロです。

この時期になると賛助さんをお招きしての練習が多くなります。
今日も先週に引き続きのヴァイオリン中島さんの他、
シンセサイザーに5本のコントラバスと、練習会場はぎゅうぎゅう詰め。
練習もみっちり5時まで。


さて、今日は練習の前に演奏会当日の裏方作業の打ち合わせなどもあったわけですが、
このブログを読んでくださっているかつ当日ご来場を予定されていらっしゃいます有難いお客様にお知らせしておきたいことなどを少々。。


例年演奏時間が長いことで定評のあるコンコルディアですが、
今年の終演予定は…19時50分となっております(・д・)アヤーン

…決して長い曲がやりたくてこうなっているわけではないのです。
たまたまやりたい曲が長かったんです。それだけなんです。。

長丁場を最後までお楽しみいただくために、ちょっとお腹を満たしてご来場いただくことをおススメします。いやほんとに。
お腹すいたら気が散っちゃいますからね!

そしてこのブログでも熱く語られている第3部の「三楽章第4番」。

演奏時間約40分。長い…。
大変申し訳ありませんが、第3部の演奏開始後はホールにご入場いただけない場合があります。ご了承くださいませ。。

第3部の開演は大体19時頃を予定しています。
途中からのご来場の場合は、この時間を目安にしていただければと思います。


以上、お知らせでした。
相変わらずのコンコルディアですが、今年もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


# とはいえ、個人的な本音を言えば「三楽章第4番」は是非会場で聴いて頂きたい。。
# そして世の中にはこんな美しいカエリヤマがあったのかとひっくり返された私のカエリヤマ観を体験してほしい…です。



次回は最後の通し練ですよ〜☆
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2011年06月11日

6月5日 練習報告

みなさんこんにちは。コンコルディア動画編集担当かみにょDです。
練習も残り回数が少なくなってきましたが、6月5日の練習の
様子をおおくりします。

 今回の練習曲は、群炎I と三楽章第四番でした。特に三楽章は、
バイオリンでの独奏をつとめていただく中島麻さんとの初合わせで、
心なしかメンバーも緊張していたように思われます。指揮者の着て
いるタジャレTシャツをもその緊張を和らげることはできないよう
です。合奏が始まり、いよいよVn.による主題が提示される場面・・。

 あの瞬間をどう表現したらよいのでしょう。「無」から極めて
なめらかに紡ぎ出され、そして消えて行く音のつらなり。
しかし我々の記憶のなかに、様々な光の色や、質感や、香りすら
確かに残して消えて行く音・音・音。

 これは何だ! 

 この曲だけで僅かな休憩をはさんで3時間弱の合奏でしたが、
文字通りあっという間に過ぎてゆきました。
メンバー皆それぞれに少なからず衝撃を受けたようで、Twitterや
mixiなどの興奮したエントリや、練習の様子の録音・録画がその日の
うちにネットにアップロードされた事などからそれをうかがうことが
できました。そして幾日か経過した今日になっても「あの音がアタマ
から離れない」と呟く者がいるなど、いっこうに冷める気配を見せない
ようです。

 何を書いているのかだんだんワケがわからなくなってきましたが、あれ
をうまく文章で表現できるくらいならこんな仕事してませんw。ただひと
つ言えるのは、ひとりでも多くの方に、ぜひ会場で、ご自身の耳で、感じて
いただきたいという思いが一層強まった、ということです。

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 さて、当団では、昨年の定期演奏会以降、動画投稿サイト You Tubeでの
演奏動画の公開と、楽曲解説や選曲にあたっての思いなどを交えてお届けする
アーカイブスの運営を行ってまいりましたが、みなさんもうご覧いただけまし
たでしょうか?

【You Tube】
http://www.youtube.com/user/MOConcordia
http://www.youtube.com/user/concordiamo
  
【アメブロ:Media Archive】 
http://ameblo.jp/concordiamo/

 手作り(?)の動画ですが、今年は昨年以上のクオリティを目指して
頑張ります。(カメラ何台になるんだろ?)ご感想・ご意見もお待ちして
おります。
posted by コンコルディア at 10:12| Comment(0) | 過去の練習報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする